拓也はそんな二人を気にも留めず、図書室に来てからの一時間半、黙々と問題集を進めている。普段は冗談も言うし、悪ノリもするけど、やるときはやる。その姿勢にいつも感心している。

「あの、勉強中にごめんね。ちょっといいかな?」

「雫ちゃん! 雫ちゃんもテスト勉強?」

隼人はろくに勉強していなかっただろ、と突っ込みたくなるのを抑えて彼女の方に顔を向ける。彼女もまた、テスト期間は毎日図書室に来ては隅っこの方で一人黙々と問題集を解いている。「うん、数学のこの問題がどうしても解けなくて」       

「俺に任せてよ」

雪野さんにいいところを見せるチャンスだと前のめりになる隼人の姿も見慣れてきた気がする。

最初はそんな隼人の勢いに押されて困っていた様子だった彼女も、夏休み前の体育祭の準備でクラス委員の僕たちといる時間が多かったからか、最近は自然に会話もするようになったし、こうやって時々だが勉強の相談をするような仲にもなっていた。

かくいう彼女も成績はかなりいい。この間の中間テストではクラスでトップ、学年でも三位だった。

「んー……、ん? これは……、こうだから……ん?」

「雪野さんに解けない問題を隼人が解けるわけないじゃん。数学は透に聞いた方がいいよ」

悠人の言葉に隼人はちょっとだけムッとした表情になるが、しぶしぶと僕に問題集を手渡す。

「あー、これ僕も悩んだところだ。紛らわしいけどこっちの公式を使うんだよ」

「あ、そっか。じゃあこうなって……」

「そうそう、それであとは答えが出ると思うよ」

「……できた! ありがとう黒田くん」

「ううん、ほかの教科で僕たちがわからない問題があったときは教えてよ」

「うん」

霧が晴れたように明るい表情になった彼女はぺこっと小さく頭を下げて、パタパタと元の席に戻っていった。

「……俺が教えたかったのに」

「だったらちゃんと勉強しなよ。それかわからないところがあるなら雪野さんに聞いて一緒に勉強すればいいのに」

「わかってないな、それじゃあかっこつかないんだよ」

それもそうだなと納得し、そのあとはみんなで下校時間ぎりぎりまで珍しく真面目に机に向かっていた。

次回更新は3月5日(木)、20時の予定です。

 

👉『スノードロップー雪の雫の日記ー』連載記事一覧はこちら

【イチオシ記事】病院から返ってきた彼は別人だった。物足りないと感じていた彼との行為は長く激しくなり、私は初めて絶頂で意識を失って…

【注目記事】「どの部屋にする?」選んだのは、大きなベッドに小さな冷蔵庫、広すぎるバスルーム。浴槽の前で促されて服を脱ぐと…