「ばればれだよ」

ことあるごとに雪野さんに熱視線を送っては、その視線に気づいて振り向く彼女と目が合ったなんて大げさに浮かれているのに、好意が隠せていると思っていることが逆に驚きだ。そんな嘘のない馬鹿正直な隼人だからこそ信頼できるんだけど。

「そんなことより」

「──そんなことってなんだよ」

ごめん、ごめん、とつい口をついて出てきてしまった言葉に、しまったと思いとっさに謝った。本気で悩んでいるようだから今の言葉は失言だった。不満げな隼人と僕の間に拓也が即座に入って助け舟を出してくれる。

「過ぎたことは仕方ないんだから。それよりも隼人が雪野さんに気があるってみんなが気づいたら、気を遣ってライバルは減るんじゃない?」

「その発想はなかった。天才だな」

拓也の言葉に納得したのか、先ほどとは打って変わってぱあっと明るい笑顔になった。そんな様子を見て、僕も拓也もやれやれと思いながら再び机の中の教科書を鞄に詰め始めた。

「拓也、そろそろ行かないと先輩たちに怒られるぞ。隼人も。野球部は遅れたら外周一周追加じゃなかったっけ?」

隼人と同じ野球部に入部した悠人は部活の準備当番とか言って、ホームルーム終了のチャイムと同時に教室を出ていった。今ごろはもうウォーミングアップでも始めているのではないだろうか。

「やべっ、そうだった。俺先に行くわ。また明日」

「……じゃあな」

さんざん隼人の恋愛相談を聞かされたのに、本人は足早に走り去ってしまい、教室には僕と拓也だけがぽつんと取り残された。

「……隼人って昔からあんな感じ?」

「そうだな、でもいいやつだよ」

「それはなんとなくわかる」

いつも振り回されては一緒に怒られたり、面倒ごとに巻き込まれたりしてばっかりだけど、なんでか隼人をかばってしまうような返事をしてしまう。

今日くらい恨み言の一つ言ったところでバチは当たらないと思うのだけど。でも、まだ一週間の付き合いにもかかわらず、いいやつという言葉に同意してくれた拓也の言葉が嬉しくて、自然と笑みがこぼれる。そんな拓也もいいやつなんだろう。

「俺らもそろそろ行くか」

促されて椅子から腰を持ち上げ、パタパタと音を立てながら二人で教室をあとにした。

次回更新は3月4日(水)、20時の予定です。

 

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