スージーと別れた清一が乗った飛行機は、十三時二十分に離陸した。暫くして機内が薄暗くなり、やがて、機内食が運ばれてきた。三日ぶりの日本食は、何もかもが日本風というわけではなかったが、どことなく親しみがあり、満足できるものだった。
食事を済ませた清一は、目を閉じて待った。搭乗客は、食事の前後にトイレを利用することが多かったので、行動するチャンスはそのあとにやって来ると考えたからだった。
ざわつきが静まると、清一は注意深く辺りを窺ってみた。そして、意を決して立ち上がった。
暗がりの中を機内中央へ進んでいくと、アテンダントがトイレに誘導してくれた。
「待って、これを」
暗闇の中で、そんな囁きがあった。そして、清一はなされるままにトイレの中に入った。
「……」
アテンダントの反対側で待機していた女性は、清一がさし出した小さな包みを無言で受け取ると、前方へと消えていった。
清一は、何事もなかったようにトイレから出てきた。けれども、たたまれたコートには化学物質が付着しているはずなのだ。
(二)
清一が新たに勤務することになった合浦(がっぽ)警察署は、合浦公園駐車場の隣にあった。総勢三十人ほどの小所帯で、刑事課はあったが独立性は低かった。なぜなら、何事においても青森中央警察署の指示を仰がなければ職務の遂行ができない状態だったからだ。刑事課は二名だけ。そして、一名は中央警察署に手伝いに行ったきりなので、実質は清一だけという状況だった。
合浦公園は、青森市街地の東側に位置していて市民の憩いの場になっていたが、往年とでは違っていた。かつては、合浦公園の周辺には実業高校や市立高校があったので、常に活気に溢れていた。終日若者の熱気が飛び交い、四季折々の催しがあるときには爆発した。それが今では、閑静な住宅地との印象が強かった。
【イチオシ記事】病院から返ってきた彼は別人だった。物足りないと感じていた彼との行為は長く激しくなり、私は初めて絶頂で意識を失って…
【注目記事】「どの部屋にする?」選んだのは、大きなベッドに小さな冷蔵庫、広すぎるバスルーム。浴槽の前で促されて服を脱ぐと…