【前回の記事を読む】「いるんだろう、出てこい!」誰かに命を狙われているが、警察を待つしかない…突然「バーン!」と銃声が鳴り響いて——

(一)

スージーは、殺害に清一の母が開発した薬品が使用された可能性がある、と上司から聞かされて酷く驚いた。清一の母が直接関係しているとは考えにくいが、何らかの事情があったために清一が狙われたのかもしれなかった。

スージーは、清一の母が近々帰国できる可能性があることをにおわせたが、清一の母が既にアメリカにいて捜査に一役買っているのだとすれば、清一への攻撃は清一の母へのプレッシャーになりうるものだった。

不安は、そればかりではなかった。過去にもあったが、特命捜査を始める前に相手の方から接触されたことがあった。もし、そうだとすれば、日本人が殺害された事件に関わるなという警告になるが、この時点で特定できることではなかった。

清一は、睡眠を充分とった後、動き出した。まず、フロントに行ってホテルの見取り図をもらうと、襲撃された十五階にあるプライベートルームから二階のランドリーへ逃げ込むまでの経過を細かくチェックした。特に、エレベーターを乗り換えたときの様子は、管理室で捕縛されていた者からも説明を聞きながら調査した。

「計画的な犯行でした」

夕食の席で、清一が言った。

「ホテル内に協力者でもいない限り不可能なのでは?」

「ここはチェーンホテルですから、構造とセキュリティーシステムは同じでしょう。このホテルに仲間がいて予め詳細に調べなくても、襲撃は可能だったでしょう。それに、フロントにある宿泊者カードを見せてもらったら、僕とあなたの部屋が逆でした」清一のスージーを見つめていた目が笑った。

「それで、私が狙われた?」

その後も二人の会話は続いた。けれども、襲撃されてからの経緯は分かったものの、ターゲットが清一なのかスージーなのかまでは解明できなかった。

一夜明けると、清一は予定を変更して帰国することになった。当初は、ポートランド空港からシアトル空港へ移動して国際線に乗り換えることにしていたが、スージーの提案で安全策を選んだ。

シアトルから搭乗することになった清一には、大切な課題があった。それは、機内のトイレを利用して、殺人のトリックを暴くことだった。下手をすれば自分が犠牲者になる危険もあったが、殺人のトリックを暴かなければ、一連の事件は解明できないように思われた。