【前回記事を読む】離婚について母に事後報告すると、「なんて罰当たりなことをしてくれたの」と仏壇の前で頭を下げ合掌し念仏を繰り返すように…

マーガレットお婆さん

わたしは新興家電メーカーの宣伝部に所属し、新しい技術によって開発された高機能商品を消費者に知ってもらうためコマーシャル制作に全精力を傾けていた。

ところが、アパート探しや引っ越しのことで多忙を極めていたその時期に、下請け制作会社の若手クリエーターが致命的なミスをした。

わたしは間違いがないようにと、書類でも打ち合わせでもくどいくらい念押ししておいたにもかかわらず、だ。

問題はその後だ。ミスをしたクリエーターが大手広告代理店の幹部の息子だったため、「詰めが甘いんだよ」の一言で、会社は何の落ち度もないわたしにすべての責任を押しつけてきた。

わたしは上司に食い下がったが、それがいけなかった。

わたしは組織の中で《丁重に》干され、結局退職せざるを得なくなった。私物をまとめ社屋を後にする時、それ見たことかと後ろ指を差されているような気がした。

わたしはその時、三十代前半だった。

仕事と結婚に失敗したが、まだまだ巻き返せると信じていた。次の仕事を探さないといけなかったが、しばらくなら収入がなくてもやっていけそうな貯金があった。

わたしは思い切って長期の海外旅行をすることに決めた。