それを聞かされたとき、わたしは微笑みをつくってみせた。

けど怯えたのは、あの日から。だって、呼吸するみたいにシュウはずっとそばにいるものだって、勝手に思っていたから。

正直言うとね、勝てないと思った。

何の形も色もないはずなのに、未来っていうのは、シュウの心も表情もここまで輝かせてしまうんだって。

憧れを吸収して膨らんでいくシュウの姿を、受け止めることができなかった。同じスピードで進むことは、できないと感じた。

それなら、わたしの想いをシュウの未来にゆずることにした。

だからちゃんと、いまは応援してるよ。

わたしのために東京へ行かない、なんて言わないで。

だって、心底楽しそうにわくわくするあのシュウの表情は夢にしか宿らない。

残念だけど、私にシュウの未来の代わりはできない。

いまは、シュウがいなくなることに怯えてるんじゃない。

シュウがいなくなったことに、慣れてしまう自分に怯えてる。

でも気づいたんだ。シュウの未来ばかり気にしてる場合かって。

わたしにも、きっとあるよね。わくわくする未来が。

シュウが嫉妬してしまうほど、真剣に取り組むことのできるわたしの未来が。

シュウなら気づいているだろうけど、いつか、物語を書くね。

弱虫なわたしがわくわくできる場所は、そこにあるから。

もし、シュウとわたしの未来を描けるとすれば、それは物語の中にあるから。

愛子の手紙を胸に押し当て、工藤は教会の十字架を見上げた。

自堕落に、自分の人生を放棄しようとしていた自分が心底恥ずかしくなる。こんなにも瑞々しい感性で生きようとしていた愛子に顔向けできない。生きてみよう、愛子の分まで。

樅の木に一礼し、工藤はそれを告げるために海まで走った。

本連載は今回で最終回です。ご愛読ありがとうございました。

 

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