【前回の記事を読む】少年時代、父は身内を「ボケ」と馬鹿にしていた。そんな父が脳卒中で倒れて、性格にも変化が…
両親の結婚
母
私は小学一年生の頃、下校した後、家にまっすぐ帰らず、友だちの家に寄ったことがある。その家は、学校を中心とすると、私の家の方角とは反対の方角にあり、学校よりさらに遠いところにあった。
長居はしなかったものの、学校よりさらに遠くへ行ってしまったため、家に帰るのが、いつもより遅くなってしまった。
私は内心、不安な気持ちで家に向かって急ぎ足で歩いていたが、ちょうど学校を通り過ぎた辺りで、道の向こうから母が歩いてくるのが見えた。
私の帰りが遅いので、母が心配して捜しに来てくれたのだ。母の姿を見つけた私は、嬉しくなって母のもとに駆けよった。母も私に気づくとほっとした様子で私に近づき、穏やかなほほ笑みを浮かべながら私のことを抱き上げてくれた。
本当に久しぶりの抱っこだったし、もう一年生で抱っこも恥ずかしいような年齢だったのだが、私たちの他に歩いている人が誰もいなかったせいか、母は私のことを抱っこしたまま、しばらく歩いてくれた。どんな会話をしたのか覚えていないが、寄り道をして遅くなった私を叱ることもなく、母はとても優しかった。
母に抱っこしてもらったのは、この時が最後だった。
この時、私は最高に幸せな気分だった。この思い出は、私の中で、幼き日の母との大切な思い出となっている。
母は恋愛感情を知らない人ではあったが、母性本能は、女性の中でも強い方だと思う。小さい子どもが大好きで、特に赤ちゃんには目がなかった。
私たち三人きょうだいが、あの父のもとでも、比較的まともに育つことができたのは、この母のおかげだっただろう。
しかし、この母にも、父とはまた少し違った嫌な面があることに、ある日突然、私は気づかされてしまうのである。