「胸を刺された若い男性は、同年代のほかの男性と一緒に、日ごろお世話になっている人に、借りたお金を返して、お礼を言いたいと連れ立って大みそかの夜に訪ねていったんだそうです。その人の家についた時、アルコールが入っていた片方の男性は眠り込んでしまっていて、起こしてもすぐには起きなかった。

それで、車を運転していたもう一人の男性が『俺がお前の分のお金も、一緒に返しておいてやるよ』と言って、眠り込んでいる男性のお金も一緒に持って、お世話になった人のところに挨拶に行ったんだそうです。

彼が二人分のお金を返済し、あいさつを終えて車のところに戻ってきた時、もう一人の若い男性は目を覚ましていて、車に乗ったとたん『俺のお金はどうしたんだ?』と聞かれたので、『お前が眠り込んで目を覚まさなかったから、俺が一緒に持っていって返してきたよ』と答えたそうです。

すると、眠り込んでいた方の男性は、少し声を荒げて『どうしてそんな勝手なことをしたんだ』と相手の男性を詰(なじ)り、男性は『一緒に返しておいてやるよ、と言ったら、〝うん〟と言ってたじゃないか』と返したそうです。

しかし眠り込んでいた方の男性は、たたみかけるように『そんなことをしてくれとは言っていない、一緒に返しに来たんだから、当然俺を起こして一緒に行くべきだったんじゃないか、おい!』

男性の激しい権幕を聞いて大きな戸惑いを感じ、一瞬言葉に詰まった相手の男性は、『俺も、悪気があったわけじゃない。そんな言いがかりはよしてくれ』と自己弁護をして答えたんだそうです。

その後、二人のやりとりは火に油を注いだように激しい言い争いに変わっていきました。とどのつまり、つかみ合いのけんかとなり、片方の男性が、もう一方の男性の胸を、車の中にあった包丁で刺したんだそうです」

その話を聞いて、部屋の中には重苦しい沈黙が広がった。

私は元日の午後、疲れ切って、すべてを担当の当直医とICUのスタッフに任せて家路についた。元日は開いている飲食店はなく、帰りがけにコンビニでお弁当と缶酎ハイを1本買って帰った。シャワーを浴びて、温めた弁当を食べ、缶酎ハイを飲むと、あっという間に睡魔に襲われて、ベッドの上に倒れ込むように眠ってしまった。

 

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