はじめに

幼い頃、私は手塚治虫が描く空想の世界に心を奪われました。とりわけ『鉄腕アトム』をはじめとする未来を描いた数々の作品は、私の創作への情熱を大きく刺激しました。「将来は漫画家になりたい」という夢を胸に抱き、漫画雑誌への応募を始めたことが、私にとって挑戦の第一歩でした。

中学生のとき、虫プロの雑誌『COM』に初めて応募し、高校時代には学研の『高1コース』『高2コース』にイラストを投稿。次第に定期的に採用されるようになり、わずかではありますが、おこづかいを得るようにもなりました。こうした経験を通じて、創作する喜びや表現する楽しさを肌で感じるようになったのです。

父の存在もまた、大きな支えでした。父は実業家であると同時に油絵画家でもあり、ギャラリーやカルチャーセンター、レストランを経営しながら芸術文化の発信に努めていました。高価な画材や画集、漫画家の色紙やアニメ鑑賞用の映写機器を惜しみなく与えてくれた他、絵画展や多彩なアートイベントにも頻繁に連れて行ってくれました。

その環境の中で、私は「描くこと」「創造すること」の楽しさを知り、美術大学への進学を決意しました。

創造とは、何もないところから新しいものを生み出す、喜びと驚きに満ちた行為です。頭の中で描いたアイデアが形となり、人の心に届いたとき、そこには想像を超える感動が生まれます。

思い返せば、子どもの頃夢中で描いた落書きやイラストも、誰かが見て笑ってくれた瞬間に作品へと変わりました。「つくることは、こんなに楽しいのだ」―その感覚こそが、私にとっての創造の原点なのです。

もちろん、その道のりは平坦ではありませんでした。浪人生活を経て東京の美術大学に進学し、デザインを学ぶ中で恩師と出会い、デザインの奥深さと多様な可能性を実感する機会を得ました。

その後は、企業でのデザイン制作やマネジメント業務に携わり、さらに大学教員や企業のデザイン企画顧問として活動し、実務と教育の両面から幅広い経験を積んできました。制作現場と教育の両方に携わることで、「デザインとは何か」という根本的な問いに対して、多角的な視点を持つことができたのです。

そうした経験を通じて痛感したのは、課題を正しく捉えることの重要性、そしてアイデアを形にする過程で避けられない試行錯誤の価値でした。デザインとは単なる美の追求ではなく、「誰のために」「何のために」という問いに応える行為です。その視点を忘れずに取り組むことが、創作を社会に根付かせるための大切な要素であると実感しています。