俳句・短歌 短歌 自由律 2020.09.26 句集「曼珠沙華」より三句 句集 曼珠沙華 【第9回】 中津 篤明 「冬花火 亡び 行くもの 美しく」 儚く妖しくきらめく生と死、その刹那を自由律で詠う。 みずみずしさと退廃をあわせ持つ、自由律で生み出される188句。 86歳の著者が人生の集大成として編んだ渾身の俳句集を連載でお届けします。 この記事の連載一覧 最初 前回の記事へ 次回の記事へ 最新 石路の花 わが 肺葉は 地に…… リンリンと 銭を投ぐ 石 凍ててゆく 鎌の刃の 露に ぬれしは 懺悔かな
小説 『アイアムハウス』 【新連載】 由野 寿和 静岡県一家三人殺害事件発生。その家はまるで息をするかのように、いや怒っているかのように、大きく立ちはだかり悠然としていた 午前十一時。サイレンを鳴らさず、車両は静岡県藤市十燈荘(じゅっとうそう)に到着した。静岡中央市にある県警本部から十燈荘までは、藤湖をぐるっと大回りして藤市経由でトンネルを通り、小山を登ることになる。藤湖を見下ろす高級住宅街、十燈荘は、土曜の昼だが活気はない。既に外部への交通規制が敷かれているとはいえ、不気味に静まり返っている。ここで殺人事件があったことを、住民達が知っている気配はなかった。その家…
小説 『浜椿の咲く町[人気連載ピックアップ]』 【第29回】 行久 彬 「港町に大規模なワインセラー」との見出しで地元新聞の記事にもなった酒店だったが… 昼食はナポリタンを店のカウンターの椅子に向かい合わせに座って二人で食べた。「よかったらだけど、昼から一緒に行ってくれない? 気晴らしになるような楽しい場所じゃないけどグタグタ愚痴を聞かされると一人じゃ気が滅入るのよ」食べ終わると美紀が奈美に昼からの寄付集めの同行を求めた。「ここはどうするのですか?」「いいの、いいの。二、三時間ぐらいなら閉めておいても。喫茶店は暇潰しにやっているようなものだから」…