俳句・短歌 短歌 自由律 2020.09.19 句集「曼珠沙華」より三句 句集 曼珠沙華 【第8回】 中津 篤明 「冬花火 亡び 行くもの 美しく」 儚く妖しくきらめく生と死、その刹那を自由律で詠う。 みずみずしさと退廃をあわせ持つ、自由律で生み出される188句。 86歳の著者が人生の集大成として編んだ渾身の俳句集を連載でお届けします。 この記事の連載一覧 最初 前回の記事へ 次回の記事へ 最新 華燭とて 陽をば 娶らん 石の蝶 愛して苦し 薄氷 かくも 割れやすき 胸の アーチの 朝は色あせ 雪女
小説 『アイアムハウス』 【新連載】 由野 寿和 静岡県一家三人殺害事件発生。その家はまるで息をするかのように、いや怒っているかのように、大きく立ちはだかり悠然としていた 午前十一時。サイレンを鳴らさず、車両は静岡県藤市十燈荘(じゅっとうそう)に到着した。静岡中央市にある県警本部から十燈荘までは、藤湖をぐるっと大回りして藤市経由でトンネルを通り、小山を登ることになる。藤湖を見下ろす高級住宅街、十燈荘は、土曜の昼だが活気はない。既に外部への交通規制が敷かれているとはいえ、不気味に静まり返っている。ここで殺人事件があったことを、住民達が知っている気配はなかった。その家…
小説 『柴犬回想記 真珠湾の静寂vsワシントンD.C.の喧噪』 【最終回】 坂田 憲治 大戦前、駐米大使の苦悩「日本側は『日米交渉は進展の余地なし』と見切ったのかも。米国側も、交渉決裂の意思表示と受け止め…」 心なしかバーボングラスがいつもより揺れていたが、飛んでこないことを確認した我輩は少しばかり安心して気付かれないようにさりげなく座り直し、「そうですね。よりによって米国が一番嫌っている三国同盟の推進者、調印者という人物を送ってきても米国は絶対に信用しないでしょう。ひょっとすると日本側は『もはや日米交渉は進展の余地なし』と見切ったのかも知れませんね。見切った上で時間稼ぎをすることが本当の狙いかも知れ…