「行きたいところ、決めてきた?」

「いっぱいありすぎて決められないよ」

「しょうがないな。じゃあ、ここからだと浅草が近いから、そこにしよう」

東京メトロ銀座線に乗り、終点の浅草に向かった。浅草に着いてからは、仲見世(なかみせ)通りや浅草寺を観光し、その途中にアイス最中(もなか)の店を見つける。

「おいしいね」

そう言い合いながら食べる。浅草観光は本当に楽しかった。

けれど、神谷バーで夕食を食べながら彼の話をしている祥子の表情は、悲しいものに変わっていった。

祥子いわく、あの花火大会の当日も、そのあとも、電話をかけたけれどもつながらず、送ったメールの返事も返ってこなくて、それが別れの決定打になったという。

花火大会の夜は連絡が取れないまま、待ち合わせ場所だったJR土浦駅でずっと待ちぼうけ。周囲を見れば、カップルやグループ、ファミリーでごった返しているし、それで悲しくなって、駅から一番近いマクドナルドに行き、大好きなダブルチーズバーガーとポテトのLサイズを頼んで、ひとりでひたすら食べたことを淡々(たんたん)と話した。

「楽しみにしていたのに。別れたいなら、はっきり言ってくれればいいのに」

話を聞くうちに、祥子の気持ちを踏みにじった彼のことが許せなくなっていた。

黙って逃げるなんて、弱虫の優しさでしかないと、まゆは思っていた。

「まゆたちのような、カップルになりたかった」

祥子は、悔(くや)しさをにじませながらこぼした。

次回更新は2月8日(日)、21時の予定です。

 

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