東京ふたり暮らし

二〇一三年春、二十五歳の里紗(りさ)は新卒で入った銀行を退職し、地元の大阪から上京した。上京してすぐに、ファストフード店でアルバイトを始めた。そこで四歳年上の高野さんという社員に恋心を抱くようになった。

でもこの恋は、なかなかうまくいかなかった。事務所にふたりきりでいても会話がはずまないし、ひとり暮らしをしている彼のために何かできないかと思って、レトルトのお惣菜(そうざい)をあげたこともあったが、これも反応はいまひとつで、里紗が頑張れば頑張るほど、からまわりだった。

そして、最近では、高野さんとシフトがかぶらないようにされていた。シフトをつくっているのは高野さんではないので、おそらく、そのシフトをつくる人が、里紗の高野さんへの恋心を知っていて、意図的に別にしているのかも知れなかった。

そんなこんなで一年が経とうという二〇一四年の三月下旬、里紗は、学校卒業と就職に伴ってアルバイトを辞める人たちを送るための懇親会に出席した。そのあとは、二次会が行なわれる居酒屋にみんなで行った。しかし高野さんは懇親会後、すぐに仕事に入らなければならなかった。

ほかのアルバイト仲間とコミュニケーションを取ろうとするも、周りはみんな、学生か主婦。どちらにも当てはまらない里紗は、思うようにみんなと話せず、悔(くや)しい思いをして帰宅したのだった。