父親の会社が倒産したのは、ソジュンが立ち上げた新事業が原因だった。蓋を開けると父親の会社は抵当に入り、その裏には中小企業を狙う、悪徳業者の存在があり、一家離散となった家族は、一人息子を守る為ソジュンに、ソウルを離れる事を伝えた。
口を固く結び頭を垂れるソジュンの胸に、溢れるのは愛する家族との別れ、そして愛を誓ったユナから、去るという若さ故の苦痛なのか……。
ソジュンを待ち続けるユナに届いたのは、要件だけが書かれたソジュンからの手紙だった。「何日何時韓国ソウル行きの便に乗り、空港の約束をした場所で待つ事、もし会えない時は指定したホテルの、何号室まで来るように」だった。
ユナはソジュンに会える嬉しさで、きっと何でもなかったのだと、この先起こる悲しみにユナは気づきもしないのか、しかし約束の場所にソジュンが現れる事はなく、ただ時間だけが過ぎてゆくのか……。
その時、物陰に隠れながらユナを探す一つの目があった。一目会いたい一心のソジュンは、追われる危険を承知で空港へ向かった。
いつまでも来ないソジュンを諦め、ホテルへと向かうユナを、じっと見つめるソジュンの目は赤く染まっていた。
「結婚式は春が良いね」と見つめ合う二人はお互いに二十八歳だった。何もかもが満たされていた。
しかし二人が思い描いた暖かい春は来なかった。春の風が二人に届くことはなかった。
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