【前回の記事を読む】「結婚したけど別れたの」それは嘘だった。妊娠した彼女は結婚とはいかず、手切れ金として古いマンションをもらったが…

花ことばを聞かせて

心の中から消したはずなのに、妙な感情が沸き起こる由記子の胸に、Kとの甘い言葉の日々が蘇る一方、騙されてはいけないと言う声も聞こえた。

Kを憎いはずなのに感情を抑えるほど、会いたさが募るのは何故なのか、まだ微かに残る夢の証しを見たいと願うからか。

女に金を借りる男など信用ならない、それなのに何故お金をKに貸したのだろうか。何度催促してもKは返そうとしないのだ。

男など信じないと決めた教訓を、自ら破ったのだと腹だたしかった。由記子はKを信じようとした自分が惨めに思え、その思いは決して自分を傷付けないという、もう一つの教訓を強く意識させる事となった。

昼の仕事に変わったと言うKの誘いは、男女一人を連れて来る約束で、向かった夏の海は由記子に、Kとの嫌な過去を忘れさせた。

だがKの見せかけだったのか、すぐに正体を現すKに悪い癖が直る訳はなく、さっそく女から金を騙し取るKに、由記子はKが仲間だと言う親友の名を突き付けた。

顔面蒼白になるKは由記子に、お金を握らせると何も言わず去っていった。取り返せたという満足の思いの心の裏に、広がる感情は何かを無くした時の、悔しさと少しの後悔なのか。変えようのない日々は、これからも続くのだろう。

そんな由記子に数年後起こる偶然の出会いは、二人の女にとって運命となった。