両親とともに韓国から日本に渡り、成功した蕎麦屋の一人娘・名前をユナと言った。由記子とは何もかもが違い、大学を出て大手の会社へと入り、何の不自由もなく順調に進むユナには、この先に幸福だけが待っていると、そう誰しもが思うようだ。
韓国語が話せるユナに、一人の男性の担当が決まった。男性は韓国で輸入業を経営する会社の一人息子で、自ら新事業を立ち上げる為、取り引きのある会社へ入社を希望したのだ。
彼を紹介され「イ・ソジュンです」と片言の日本語に少し照れたのか、幼さを残す仕草や笑顔にユナは好感を持った。
お互い一人っ子で同じ年の二人は、傍目も気にせず急速に親しくなってゆく、もはや結婚かと噂される頃には、既に結婚の証しである指輪がユナの薬指に光っていた。
幸福な二人に不幸の知らせが、ある日ソジュンに届いた。急用があると言う韓国の両親の元へと帰るソジュンを、見送るユナの頬は既に涙で濡れていた。
ユナを慰めるソジュンは重大な事件だと気づきもしない、それは恵まれた者たちの甘えゆえか。笑顔さえ見せるソジュンだった。一時の会えない寂しさは悲劇の始まりで、そしてユナとソジュンには永遠の別れが待っていたのだから。
韓国に行ったソジュンが、ユナに言ったのは「会社の収支が合わず、今資金集めをしている。当分東京には戻れない」だった。
ユナはソジュンの為ならと預貯金や、そして愛するが故にキャッシングまでして、ソジュンにお金を送ったのだ。
ユナの元に速達が届き「もう会社の件は解決した、お金は送らなくて良い」とあったが、それなら何故電話が繋がらないのか、差出人の名がない手紙は一体何を意味するのか、分からないままソジュンの連絡は、ぷっつりと途絶えた。