脳の階層性については、脳幹・脊髄レベルから、間脳・中脳レベル、大脳皮質下レベル、大脳皮質レベル、超皮質レベルまで、段階的な機能を有す(1)

そのために、各レベルによって自己認識するこころのはたらきが異なってくる。

(一)ただ生きるとは、生命維持のはたらきだ。寝て起きて食べて排泄するただ生きているだけと思われるような状態でも、生きている意味があると思うこころのはたらきによる認識だ。

(二)たくましく生きるとは、睡眠・覚醒による概日(がいじつ)リズム、空腹と渇きに対する摂食行動、暑さ寒さに処する体温調節、繁殖のための生殖・母性行動、それらを活性化する動機づけ、恐怖と憤怒・柔和、闘争と和解など、生き残るためのこころのはたらきによる認識を言う。

(三)うまく生きるとは、関係性を構築するこころのはたらきで、家族構成、仲間づくり、社会化、共生など集団間での道徳や住み分けをはかって生き抜くことであるとする認識。

(四)よく生きるとは、集団や社会の中で生きていくうえで必要不可欠なしきたりやルールを守るだけでなく、生きていてよかったと思えるような自己実現をはかるこころのはたらきによる認識なのだ。

(五)よりよく生きるとは、生きることをよりどころとしない生き方をすることができる一種の真理の教え的な生き方に通ずるものがあるかもしれない。生きることにとらわれないので、死をも超えるこころのはたらきをする認識があるからだ。

このように、自己にはただ生きるから、よりよく生きるまでの五つのこころのはたらきが循環しながら、自己認識がなされている。

ただ生きるだけかと思えば、よりよく生きようとする。

よく生きる生き方をしているのにもかかわらず、時としてたくましく生きることにこだわったりする。

こころのはたらきは、自己の賢さやおろかさを表出させ、また善行や悪行を為す。そして、人格の多面性や個性の多様性をもたらす。

また、こころのはたらきは、万境に随(したが)って転ず、と言われるように、環境すなわち時処(じしょ)諸縁(しょえん)(時と場所、諸々の因縁)に応じて喜怒哀楽の感情がコロコロと様変わりする。