彼女を脱衣所に連れてゆき、寝室から妹のネグリジェと自分のバスローブを持ち、薔子が取って返すと、彼女はそこにうずくまって震えているばかりだった。事故がよほどショックだったのだろう。女の前にかがみ、彼女の服のボタンを外した。

女は自分でしようという気力もなく、会ったばかりの薔子に肌を見せる抵抗もなさそうで、服を脱がされるのにわずかに協力的な動作を示しさえした。

怪我をしているかもしれないと、薔子は水ではりついたツーピースの上着を注意深く取った。レース部分の多いスリップから出た象牙色の肌に、傷はなかった。そうと分かると、薔子はそれ以上はしてやらず、女の手に新しいタオルを渡した。

「身体を拭いて、これにお着替えになって。今、お湯が出るようにしますから」

薔子は立ちあがった。レースの下からブラジャーに押し上げられて、むっちりと覗いている女の胸のそばから離れたかった。

看護師さんにはなれそうもないわと思ったが、男にしどけなくつかまった女が、そのにおいのまま、薔子にも無防備であることに抵抗があったのだ。

女は礼を言うでもなく、うなずくでもなく、妙にのろのろした動作でスカートのホックを外しにかかった。目の焦点も定まっていなくて、彼女にどれだけそんな感覚が残っているか疑問だったが、自分がいては裸になりにくいだろうと薔子は脱衣所を出た。

キッチンで給湯のスイッチを入れた。湯舟の蛇口からは温泉が出たが、あとは真水が通っていた。道路側の窓から、雨の中を英国製のシルバーグレイの高級車が下って来て、薔子の車の横に着けられるのが見えた。

左サイドを無惨にこすっており、右のヘッドライトが割れていた。谷川に寄りすぎて慌ててハンドルを切り、反対車線の山にぶつかって止まったのだろう。居眠り運転でもしていたのだろうか。今のバックの仕方を見ても、下手な運転をする人とも思えない。

 

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