2 世界は生き物や人間が作り出す
私たちが生きる【世界】の捉え方
本書は哲学的な視点から、私たちが生きる世界の様々なことについて論じているが、そもそも「世界」とは何だろう?
一般的に人はまず世界があり、あるいは宇宙があって、人はその中に生きており、少しずつ世界や宇宙の真理を判断したり、はっきりさせていくと考えられている。
こうした考えは何の不都合もないが、問題が価値観、感受性を含むものとなると話が変わってくる。
例えば、人口減少・少子化対策として移民を受け入れるべきかどうかという問題は絶対的な正しい答えが出ないだろう。
そうした問題に答えるためには、正しい答え(真理)があり人はそれに向かって少しずつ進歩しているという考え(科学者の考え)を転換させる必要があるのである。
そこで一つの考え方の転換を示してみる。
世界はない。あるのは【カオス】であり、その【カオス】に生き物や人間が世界―世界像【コスモス】を作り上げるのであると考える。
コスモスという言葉は、かのピタゴラスが用いたもので、秩序を意味するギリシャ語に由来し、「同時代の、調和の取れているもの」を示す。
では、生き物や人間は何によって世界像【コスモス】を作っていくのか?
生き物は身体によって世界を作っていく。生き物、例えば猿を考えてみよう。
生き物は欲望(快―不快)によって自分が欲しいものを見出す。
実験で猿を空腹にして欲望を生成する。食べ物を与える。それを取ろうと手を伸ばす。食べ物は檻のなかにあるので取れない。他の方法はないかと考え、部屋にあった棒に手を伸ばし引き寄せる。
このように、自分の欲望がまず始発点であり、それを可能にするものとして自分の体を使ってそれができるようにするのが基本的な生き物の姿である。
その欲望により世界は作り出される。自分にとって好ましいもの、嫌なものの分類や、それがある場所の知識(空間)の形成だ。
また、それに向かうために耐えなければならない忍耐(時間)の形成がなされ、周りのものの配置やそれを得るための方法という順序で世界が構築されていく。
しかし、人間は体だけではなく、言葉によっても世界を作る。
人は生まれるとすぐ言葉の世界に投げ込まれる。母が話しかけてくる。物には名前があることを知るようになり、言葉でそれを要求するようになる。
人は、言葉の網の目の中に生まれてくるのである。
言葉により知識が急速に取り入れられていき、人の世界は拡大していく。
言葉によって相手への自分の思いを伝えられる。目の前にないものを示すことができる。昔のことを思い出しやすくなる。将来のことを予想しやすくなる。
考えることができるようになる。言葉によって知識を次の世代へ伝えていける。知識の積み重ねが進んで文化が発生する。
このように世界は拡大し、重層化していく。