【前回記事を読む】学校の教科書を最後まで読んだことがあるか?——「面白い小説は読み切るが、教科書は授業の進んだところまで…」
片想いだらけの青春
コラム③
小岩井農場での実習
さすがに三年生になると専門課程も増えて、少し真剣に取り組まなければ追いつけない。
民法の戒能通孝(かいのうみちたか)教授の講義で当時入会権(いりあいけん)に関して裁判等で話題になっていた「小繋(こつなぎ)事件」のことを知って、「日本の牧畜業の将来に関心をもって」という理由を付けて、専門外ながら(自分なりの就職活動の一環として)小岩井乳業の本社を訪問し、何とか農場実習に参加することができた。
配慮して便宜を図ってくれた面接官には感謝している。たまたま同室になった数馬國治君とは数日間に満たない出会いであったが、先に実習を終えた彼から雨合羽を借りた縁で手紙のやり取りをした。
福井高専の一期生ということもあり心構えが私とは違って、こちらが恥ずかしくなるくらい輝いていた。彼からもらった手紙は大事に取ってある。
おもいで巡り
何年か経った早春の一日、道路にはまだ雪が残っていて、木々が芽吹き始めた時期に、ふと思い立って小岩井農場を再訪した。
印象深かったのは、事務所には薪のストーブが暖を提供していて、そこで管理人の方の話を伺ったことだ。その方はもともとは九州の人で、炭鉱が閉鎖になってグループ会社の斡旋で、配置換えの形をとってこちらに見えられたと、薪をくべながらしみじみと話されていた。企業の盛衰が人の一生をも差配する実例を感じた。