順子はまさ子の手を握った。

「だから、何かあったらいつでも私を呼びなさい。私も、協力する一人だから。真夜中でもいい。絶対に連絡して」

その日の帰り際、まさ子は駅前の本屋に立ち寄った。U病院の近くなので、小さいながらも医療や健康に関する本が豊富だ。

高血圧や糖尿病などの生活習慣病やがんについて、最新の情報を扱ったものの他、『西洋医学の落とし穴』『切らないで治す』など、従来の医療に一石を投じるような論調の本も並んでいた。

まさ子が医療の棚の前に立っていると、初老の店主が声をかけた。

「何かお探しですか?」

「臓器って……」

「臓器移植関連はこちらです」

店主は「臓器移植」「ドナーバンク」などの本が並んでいるところに案内した。

「ご家族に、どなたか治療が必要な方がいらっしゃるんですか?」

「いえ」

「じゃ、こっちかな」

店主が指した棚には、「脳死」について本が並んでいる。

「今、臓器移植を巡っていろいろ報道などもありますので、結構皆さん関心ありますね。脳死は人の死か、ってね」

まさ子は思い切って聞いてみた。

「脳死になると、知らないうちに臓器を取られる……なんてこと、ありませんよね」