チワワに見えるガッキー君は“動物”に変わることができ、柴犬に見えるグッキー君は“静物”に変わることができる。のみとかサングラスとかに変わり翔太と行動を共にしている。

見るものは刺激的で食事も美味しい。二匹の共同生活者もこのままで良いと思っているのだが……グッキー君は、忘れてしまった罪悪感が胸の奥に残っている。

ある日の夕方、そのタクシーは調布駅のロータリーに到着した。小雨の降り出した駅前広場には、先を急ぐスーツ姿の人が見えた。

後部座席には七十前後と思われる老夫婦がいた。

「さあ、着きましたよ、おじいさん。足元に気を付けてくださいね」

後ろの席から声がした。そう言うと奥様は先回りして旦那様が降車するドアの横に傘を持ち、おじいさんが降りてくるのを待ち構えている。

「大丈夫だ。俺はちゃんとしている」

キャップの横から白髪が風になびいているおじいさんは注意されたことに苛立ったようで、大きな声を出した。ゆっくりとした動作で両手を使いながら下車した。

ドライバーの翔太はハンドルの横にあるレバーを押し、後部のトランクのロックを解除して外に出た。そこには夫婦の荷物が沢山あった。

小さな紙袋二つをご主人に手渡し、残りの荷物を取り出してニコニコしている奥様に手渡した。

「ありがとうございました」

そう言って二人は広場を横切り駅の改札に向かった。

杖をつき右足を庇いながら歩くご主人に合わせ、奥様もゆっくりと歩いている。

「ご利用ありがとうございました。お気を付けて行ってらっしゃい」その後ろ姿に翔太は元気良く声を掛けた。

二人は下りのエスカレーターに消えた。運転席に戻った翔太は深呼吸をした。本日の業務が終了した。

 

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