【前回記事を読む】ニューヨークの孤児院で育った彼女。もの心つく前からそこにいて、孤児院に入った経緯は当然分からず…
第一部 生命の旅
第一章 生命の火が消えるまであと百八日
美咲の章(一) 宿命の邂逅
美咲は何か予感めいたものを抱いた。何か本能のように自分に宿命があるのならそれに逆らうことなく清流の上を漕いでいく一艘のボートに乗っているようだと。
一度乗ったら降りられない。流れに乗ったら引き返せない。何かの力に引き寄せられるように日本へ行こうとしている。決して回らない運命の石臼が今、自分の手の力で動いたかのようだ。微動だにしない石臼がガリガリと音を立て美咲の力で動いて行く。
一人の行動ではなく何千年も前から組み込まれた定めのように極東の地へ向かわなければならないと美咲は感じた。誰かが自分を待っている。何かが待ち構えている。全てを受け入れ、乗り越えなければならないものもある。打ち勝たなければならない。
それを超えなければ自分を待つ人には会えないことも本能的に分かっていた。まずは日本へ急ごう。日本の地に立って考えよう。美咲は自分に言い聞かせた。ニューヨークでの最後の夜、美咲は不思議な夢をみた。
美咲は真っ暗闇の中に一人佇んでいた。何も見えず何も聞こえない。自分が今、いったいどこに立っているのか空間の把握ができない。その暗闇に突然小さな光の珠が現れた。それは段々大きさを増し、バレーボール大になり中心部から光の筋を数十本放ちだすと直径が五メートルほどの光の珠になった。
「私はエリーナ・モーセだ。聖なる女よ、私の声を聞くこと可能とするか? 世界中に闇が蔓延する今、おまえが今、成すべく宿命を捉えよ。良いか。世界中には多くの欲望が蔓延している。おまえの力で闇の手からこの世界を救うのだ。