【前回の記事を読む】顔を見るなり抱きついてくる客と簡単な会話を交わす。観察し、「次の指名」につなげる、シャワー前の会話術は…
言葉のサラダ
「ねぇ、これ可愛いでしょ?」
彼女が夏海に見せるものは全て同じキャラクターだった。聞けば同世代の風俗嬢は、皆サンリオの商品を買い集めているらしかった。夏海の娘でさえもうサンリオは卒業しているのに、何故彼女たちはこぞってサンリオに夢中になるのか。
彼女が使いこなしている座布団に、ふと目をやった。パステル調の色彩の中に潤(うる)んだ瞳のウサギが描かれている。まだ二十歳を少し超えたばかりと思われる少女は、このパステル調のウサギに癒(いや)されているのだ。
見知らぬ男性に身体を委ねることを繰り返し、荒(すさ)んでしまった心をこのウサギが癒しているのだ、さもなければ遠い日の何も知らなかった子供の頃に想いを馳せ、そこへ戻ろうとしているのだ、と夏海は少女の中の真っ白な部分に触れて、悲しみを共有した。
彼女たちはねじれた笑顔とパステルの色調に自分自身の居場所を求めていた。だが夏海はねじれた笑顔の中には何も見つけられず、見つかったものは、いずれ自分を喰いちぎり亡きものにするであろうと予感していた。そんなのはまっぴらごめんだ。だからこそ早くこの蜂の巣から出なければいけない、そう夏海は心に誓っていた。