イザベラは力無くヴィルギリウスを手に取ると、隣のテーブルに着いて読み始めた。ふと見ると、部屋の隅にジョヴァンニがいた。ジョヴァンニはこちらを向かなかった。イザベラは本に目を落としたが、少しも先に進まなかった。

夕方、イザベラが図書館から出ると、空は淡いすみれ色を帯びた薄水色に暮れなずんでいた。日没からとばりが下りるまでの、刻々と変わる夕暮れの光の中でも、透き通った水の様な光で空気が満たされる瞬間を、イザベラはいつも心を震わせる思いで見るのだった。今、折しもあたりはその光で満たされていた。

イザベラは、図書館のポーチの石の円柱の間からいつまでも西の空を、うち眺めていた。

イザベラは次の日も図書館に行った。力無く階段を上り、樫の扉を開けたが、今日もエンリーコの姿は無かった。あの野外劇場から走り去って以来、エンリーコはイザベラの前に姿を見せなかった。エンリーコは4人の中でも一番無邪気な少年だった。次の日も、その次の日も、エンリーコは現れなかった。

イザベラは夜も寝つけなくなった。明け方やっとうとうとしても、またすぐに目が覚めた。絶えず頭がぼうっと熱く、めまいがしそうだったが、それでも我慢してイザベラは毎日図書館に行った。しかし、いつまでたってもエンリーコは現れなかった。

そうしているうちに、イザベラはとうとう熱を出した。寝ていても少しも心は休まらず、熱はなかなか下がらなかった。

「もう気にしないで。こんなことばかり続けていたら、本当に死んでしまうわ」

枕元で母が涙声で言った。それでもイザベラは悲しくて寝ながら涙を流し続けた。

数週間後、やっと熱は下がった。イザベラは、力が抜けてふらふらする身体に鞭打ち、数週間ぶりに図書館に行った。そろそろと階段を上り、全身の力で樫の扉を押し開けた。

次の瞬間、イザベラは我が目を疑った。ちゃんと4人揃ってテーブルに着いているではないか。彼らはイザベラに気づくと、一斉にこちらを見て微笑みかけた。イザベラは、涙がこみ上げてきて、4人の顔がゆらめいて見えた。

 

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