【前回の記事を読む】噛みちぎられるような痛みに耐えて、娘の口に指を突っ込んで病院へ…父は命の恩人だった。もし指を入れてなかったら…

丙午と野良猫記

私と共に長い間人生を歩んでくれたワゴン車も、色々な所が故障してきた。娘も運転するので新車を購入する時が近づいている。あともう少しだけ一緒にいられるこのワゴン車を、私はスマホで写真を撮ったり声をかけたりしている。

「今日も無事に走ってくれてありがとうね」

「ご長老で大丈夫かい?」

「また明日も運転するからよろしくね」

等々、車に乗る時にはエンジンの音を確認し、ハンドルをなでなでしてあげている。そうするとご長老のワゴン車は、安全無事故で私を運んでくれる。

車は物であるが草花と一緒で、声をかけ大事にお手入れやメンテナンスをし、同じ時間を共有する楽しさと幸福感を味わうと、車本体が持っている、安全走行で私を運んであげようという気持ちを伝えてくれるのである。車にも魂が宿っていると感じる事は多々あった。「愛車」という言葉がピッタリだ。

夏休みのテレビの話に戻るが、昔のテレビはリモコンではなく、ガチャガチャとチャンネルを回していた。アニメが終わるとチャンネルを回して、夏の甲子園を見た。

夜の特番はUFOの番組である。母がこれを好きだったので、夜一人で見始めると私も隣に座り一緒に見た。最初から最後まで見ると、その後すぐに寝なければならない。布団に入っても、宇宙人のつり上がった大きな目が鮮明に頭に残ってしまい、眠れなかった。まぁ、それでも夏休みなので夜更かししても何とかなった。

そして忘れてはいけないのが夕方四時からのドラマである。この頃から学校を舞台にした青春ものが始まった。ニューミュージックの音楽が流れ、下駄にジーンズ姿で、下宿先での出来事や大学生活などを自然の美しさと共に表現してくれた。私は(大人になるってこういう事なんだなあ)と憧れの眼差しで見ていた。

何と言っても夕方五時以降は、辺りがうす暗くなると共に始まる野球アニメだ。息子と父と姉ちゃんの三人家族。小さい息子にギプスをはめて猛特訓したり、父親が怒ってちゃぶ台と皿が飛ぶ。まさに「スポ根」。

夜七時になるとプロ野球の試合が放送された。父が仕事から帰って来て、夕飯に晩酌しながら観戦する。夏なので窓を開けて、テレビからプロ野球の応援の音楽が流れると、外は暗く静かなのだが、なぜか家の中は活気づいた。えだ豆やとうもろこしを食べながら私も一緒に観戦した。