教職員室(きょうしょくいんしつ)で、校長先生から紹介(しょうかい)を受けた清水慎太郎先生の風貌(ふうぼう)に教職員は「エッエッ」とびっくりした。とても、大学を卒業したばかりの新卒(しんそつ)の先生には見えなかった。

すでに、頭髪(とうはつ)には白髪(しらが)が混(ま)じり、顔にはたくさんの皴(しわ)があった。外見からは、ベテランの中年(ちゅうねん)の先生に見えた。

清水慎太郎先生は自己紹介(じこしょうかい)の時、左手に夏ミカン風の果物(くだもの)を持ち、右手に橙色(だいだいいろ)の紙を持って、話を始めた。

「以前採用面接の時、校長先生からここの生徒は逞(たくま)しいとお聞きいたしました。そこで、本日(ほんじつ)ここに『橙(だいだい)』の果実(かじつ)をお持ちいたしました。この橙は、とにかく逞しいんです。普通(ふつう)の果実だったら、花が咲き実(み)を付け熟(じゅく)しやがて落下(らっか)します。

ところが、橙は熟しても落下しません。新しい花が咲き、新しい果実が生(な)ります。何と、一本の木に古い果実と新しい果実が世代(せだい)を異(こと)にして、つまり代々(だいだい)にわたって生っているんです。橙は黄金色(こがねいろ)に輝いています。

黄金、つまり金は富(とみ)の象徴(しょうちょう)です。正月に黄金色に輝く橙を飾(かざ)ります。実に縁起(えんぎ)が良い。代々にわたって繁栄(はんえい)することになります。受験生も落ちない果実の橙を飾ります。

この紙は、橙色です。橙は逞しさの象徴(しょうちょう)です。ここの生徒は逞しいとのこと、教えることが楽しみです。以上」

新人の先生で、こんな挨拶をする人はいないので職員室の先生方は呆気(あっけ)にとられていたが、それでも面白いので自然発生的に拍手(はくしゅ)が起こった。

次回更新は1月14日(水)、11時の予定です。

 

👉『チャンピオンへの道』連載記事一覧はこちら

【イチオシ記事】マッチングアプリで出会った女性と初デート。新橋にほど近いシティホテルのティールームで待っていると、そこに現れたのは…

【注目記事】手術二日後に大地震発生。娘と連絡が取れない!病院から約四時間かけて徒歩で娘の通う学校へと向かう