【前回記事を読む】開始6時間、関ヶ原の戦いは家康側の圧勝で決着した。こうした経緯を踏まえ、家康は…

天狗の申し子

そして「人生は他者の言動に感動し共感した場合には、その言動の本人の主張を尊敬しそれに倣(なら)う。

功名心を優先する生き方に比べてなんと素晴らしい生き方があるものだ」と、この名言の意味を解説した。

生徒達はそれに頷きながらも、先程の晋作の名解釈を思い起こして改めて晋作の才能に驚いていた。

晋作は剣道場でも異才を発揮した。

一対一で打ち合うことが狙いの稽古も、晋作は試合本番とみなして相手を打ちのめした。

「かかれ」の声が早いか晋作の打ち込みが早いか。晋作は剣道師範の合図を盗み見ていて、「かかれ」の声よりひと呼吸早く打ち込むのが常だった。

これは違反ではないが、かといって決して褒められることではなく、相手は快く思っていなかった。

しかし誰も晋作に文句は言えなかった。晋作は明倫館の教室や剣道場で常識外の行動をし、異端児として目立っていく。

しかし一方で、晋作にはどこか優しさが備わっており、その可愛げが晋作を排除する動きを止めさせていた。

晋作は模範となる教えからはみ出していたが、藩主を危機から救い日本を主導する頭領にすることと、高杉家の家名を高めることを目標に掲げて、両親の教えには無条件で従うことにしていた。

晋作はいつしかこの世を戦場とみなし、こうした大きな目標を実現する為に、「世に生きるとは決戦に完勝すること。人生は完勝しか値打ちはないのだから」と信じ込んだ。

そして、相手の急所を押さえた奇襲戦を得意とし、どう戦い方を組み立てても完勝出来ない決戦なら決戦を避けて逃げて、安全な場所でおもしろおかしく遊んで完勝に必要な英気を養うという強烈な処世術を身に付けていった。