晋作は明倫館で優等生の評価を得ていたが、枠からはみ出し大罪人となった吉田松陰の魂迸(ほとばし)る生き方に惹かれ、松下村塾に飛び込んだ。
「先生は何故命懸けでペリーの船に乗って米国に行こうとされたのですか」
松蔭が答える。
「日本で一番世の中の動きを知っていると言われている佐久間象山 (しょうざん)先生を江戸でお訪ねした時に清国の魏源(ぎげん)が書かれた海国図志という本を見せられた。
海国図志は阿片取締りの任を解かれて左遷させられた林即除 (りんそくじょ)が親しい同志の魏源に作らせた世界地図と帝国主義の動向を整理した優れた書だという。
そしてその折に書いてある清国の悲惨な現状を聞かされた。
自分も含めて日本人がお手本としてきた中国が、欧米帝国主義の勝者である英国と戦い惨敗して属国のようにされていることを知らされた」
松蔭に魏源が説く帝国主義の動向について語る象山は、阿片戦争こそ清国が敗惨国に転落した元凶だと繰り返した。
【イチオシ記事】男たちの群れの中、無抵抗に、人形のように揺られる少女の脚を見ていた。あの日救えなかった彼女と妹を同一視するように…