私は時計を見た。莉奈が出てからすでに三十分以上が経過している。いくらなんでも遅すぎだ。近くの商店が開いてなくて、駅前まで買いに行ったのだろうか。それとも……。物騒な想像が頭を巡って、水滴のついた大吟醸を冷蔵庫にしまうと、カーディガンを羽織った。

「ごめんごめん、遅くなって」

ドアを出ようとしたところで、戻ってきた莉奈と出くわした。莉奈は、ボールのようなものを抱えている。

「ほら、すっごくいい香り。食べ頃だって」

「どうしたの? メロン」

見るからに高級そうな、大玉メロンだ。

「どうしたと思う?」

ふふふ、と莉奈が笑って、驚くようなことを口走った。

「二〇二号室のおばさん、いい人じゃない」

「え、まさか、不知火さんが?」

「さっきさ、行こうと思ったら、二〇二号室の玄関の前を掃除している男の人がいて、四〇二号室の方ですかって呼び止められたのよ。ええ、まあ、その関係の者ですけどって言ったら、メロン、くれたの」

「あの家、おばさん一人暮らしのはずだけど」

「うん、その人は不知火さんとやらの息子さんなんだって。時々、母の様子を見に来てますって言ってたわ」

さっき、莉奈と帰ってくるときに見た一階の車は、不知火さんの息子さんのなのだろう。

「でも、今からちょっと買い物に行くんですって言ったら、帰りに声をかけてくださいって、そのときメロン、お渡ししますって。親切でしょ。で、わさび買って帰りに寄ったの」

莉奈がわさびとともに取り出したのは、有名な豚まん二個入りだ。