旧家 奥井家が変わっていく
親父・誠一は長男で、勝二、清という弟と、幸子という妹がいた。おふくろには、新しい兄弟姉妹が突然三人増えたことになる。
皆食べ盛りで、清おじさんの思い出によると、おふくろが嫁いでくるまでは食事は大皿で、従業員との食事の兼ね合いもあり、心の安らぎがなかったという。
しかしおふくろが来てからは、めいめいの皿におかずを取り分けてくれたので、心が安らいだそうだ。また、顔の大きさぐらいの握り飯を握ってくれて、天国に上るくらいうれしかったとも聞いた。みんな「土浦の片田舎に鶴が舞い込んだ、掃き溜めに鶴だ」と喜んだらしい。
庭で飼っている鶏が卵を産んで清おじさんは一刻も早くおふくろに見せたいと思い、二階にいるおふくろめがけて卵を空高く放り投げたそうだ。おふくろは卵をキャッチするのに懸命となり、卵はキャッチしたのだけれど結果気がつけば清おじさんの両腕の中にいたそうだ。
※ 前川教会牧師・中村万作著『愛のわざ』より。
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