このようにつらい注射を続けても改善の兆候を感じることができなかったために、セカンドオピニオンを考えるようになったようです。お医者さんが原因不明と言われるのでどこの病院に行っても同じことを言われるだろうと私が言いましたところ、一人で専門病院に行きました。

しかしMRI画像と脳脊髄液の検査データを持参するようにと言われ、後日最初に受診した病院から取り寄せて私も同行しました。

ステロイドパルス療法の副作用

入院時は、最初の発症時と同様に「ステロイドパルス療法」が主な治療法です。

ステロイドは体内に生じた炎症を抑える作用や免疫力を抑制する作用があるといわれます。そのため多発性硬化症のような自己免疫疾患の治療に薬として使用されますが、薬としての副作用が数多く報告されています。

パルス療法開始に当たって担当医師から、次のような副作用出現の可能性について説明があったそうです。

体重増加、満月様顔貌・高血糖、糖尿病・消化管潰瘍・骨粗鬆症、大腿部骨頭壊死・精神障害(不眠症、多幸症、うつ症状)、白内障・緑内障、劇症肝炎・感染症誘発・増悪、ステロイド筋鞘症、副腎不全など

妻に最も強く現れた副作用は、満月様顔貌(ムーンフェース)、白内障、骨粗鬆症、うつ症状(インターフェロンの自己注射で発現)でした。以下にそれぞれの副作用の詳細を記載します。

副作用1 満月様顔貌(ムーンフェース)

ステロイドは内分泌系(ホルモンを産生し分泌する組織)の一つである副腎(腎臓の上部にあるソラマメのような形の臓器)で産生し放出するホルモンでいくつかの種類がありますが、その一つに糖質コルチコイドという物質があり、その一種がコルチゾールになります。

コルチゾールはアドレナリンと同じように、ストレスを感じた緊急時に分泌され血圧や血糖値を高める作用でエネルギーの増産を促しますが同時に免疫を抑制します。

ステロイドパルス療法は、自己免疫疾患などのときに免疫を抑制する目的で体内に点滴注入する療法であると認識していますが、このコルチゾールには糖新生を促す作用もあるのです。

病気などエネルギー増産を必要としないときに余剰のブドウ糖が産生されますと、貯蔵するために脂肪酸に変換されます。結果的に脂肪の付きやすい顔や腹部に蓄積するため、ムーンフェースになるのではないかと考えています。

妻は顔が大きくなるのを大変嫌がっていましたが、人に会うのが大好きでしたので知人・友人がお見舞いに来てくださるのを楽しみにしていました。

 

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