セットリストNo.1(第一章)

7 Request Line – Rock Master Scott & The Dynamic Three

DJースの中で翔一がハンバーガーを、ほおばっている。

すると、ブースのドアが開いて
「おはようございます」サブの山崎が、出勤してきた。

翔一は、山崎にハンバーガーを差し出しながら
「おはよう」と、少し、しゃべりづらそうに言った。

山崎はこのDJブースで、翔一に雇われる形で、このお店に在籍している。

六本木だけに限らず、何処でもそうだと思うけど。
DJという職業には、普通でいうところの給料、というものはない。
DJに支払われる報酬は、一般的にギャラという。

DJは、そのお店でプレイしていても、お店の従業員のように給料をもらったりしない。
お店はDJブースに対して、月ごとに経費を投げる。

その経費の中には、毎月買い足していくレコード代と、音響システムを管理、維持するために必要な物品を、補充する費用、それにDJのギャランティーが含まれている。

例えば経費として、月100万円渡されるとする。レコードは月に10万円、音響システムに対しての経費が、3万円くらいだとすると残りは87万円。

それが、DJ達のギャランティーになる。

1日も休むことなく、営業時間の全てを1人でやり、それなりに客を呼ぶことができれば、この87万円は、1人のギャランティーになるがそれは、ちょっと不可能だ。

ということで、普通ならハウスDJとして、2、3人は最低でも必要。
それに、週1日くらいは休みを取る。
そんな日には、オフのDJの分、ゲストDJを補充したりする。

たとえ87万円あったとしても、振り分けてみれば大したことはない、というのが実情だったりする。

だが、DJはお店の営業時間に拘束されることはない。
自分にわり充てられた時間を、きっちりとやってればフリーな時間帯に、なにをしていようが本人の自由なのだ。

たとえ他のお店にDJをしに行っても、誰も何も言わない。
DJの仕事ってのはこのへんに、普通の仕事とは全く違った常識がある。

腕のいいDJは、1晩に2、3軒かけもちしている。
当然、月に稼ぐギャラもそれなりに増えてくことになる。

今では、実力で稼ぎを叩き出す。というレベルになったDJ達も、初めて入った頃はこの世界で苦労をしたはずだ。