麻利衣は全身の血の気が引いて、頭がくらくらして倒れそうになるのをやっととどまった。
「10年前ということは今生きていたら31歳……。星座は? 血液型は? 静岡県のどこですか? 民宿を経営していましたか?」
「ちょ、ちょっと待って。どうしたの?」
切羽詰まって矢継ぎ早に質問する麻利衣の様子に鍬下は困惑した。
「教えてください!」
「えーと、血液型は分からないけど、12月14日生まれだから、射手座かな。確かに母親が富士宮市で民宿を経営していて、愛さんはお手伝いをしていたそうだ。それがどうかしたの?」
麻利衣は開いた口が塞がらず、ふらふらと数歩歩いた後、がっくりと床にへたり込んでしまった。
「ま、まさか私が初めてここに来た時に隣に彼女の霊が……あなたはその人を見た……」
その時賽子がカチャリと音を立ててカップをソーサーの上に置き、おもむろに立ち上がり、床にへたり込んだままの麻利衣の前に昂然と立った。
見上げると女神のように美しい立ち姿を窓から差し込んだ陽の光がまるでオーラのように包み込んでいた。翳が差したせいで読み取れぬ表情の賽子が厳かに宣った。
「これでやっと分かったか。私が完全能力者(パーフェクトサイキック)だってことが。私の依頼主である石川愛は父親の羽牟が警察官でありながら自分のために殺人の罪を犯し、人知れず苦悩していることに心を痛め、彼に罪を償わせるよう私に依頼したのだ。
ただ鍬下、おまえの推理は間違っている。林はMRIではなく、羽牟のサイコキネシスによって殺されたんだ。まあ、おまえたちのような凡人に理解できないのも無理はない。真実とは常に闇の中に漂っているものだからな。その真実に辿り着けるのはごくわずかな選ばれた者だけなのだ。
ところでバナナ、約束通り、今日からおまえは私の奴隷……失礼、助手になってもらうぞ。覚悟はいいな」
麻利衣は何か言い返そうとしたが、まるで池の鯉のようにパクパクと口を開けたり閉めたりすることしかできなかった。その日、麻利衣は家に帰ると、例の古い12冊目のノートの余白のページに次のように書き加えた。
河原賽子――傲慢無礼な謎の自称超能力探偵。明日から彼女の助手として働くことになった。お父さん、私は必ず賽子の正体を暴いてみせます。
「サイコ1――念力殺人」終わり。「サイコ2――死の予言者」に続く。
1月下旬連載開始予定。お楽しみに!
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