俳句・短歌 句集 四季 2020.09.21 句集「抱く」より三句 句集 抱く 【第8回】 松永 みよこ ―春― 身に余るミモザ抱えて人を待つ 猫の恋吾よりいくばくかは清く ―夏― 膝頭抱いて鎮まぬ青嵐 幸せを温めなおす五月かな ―秋― 千の菊抱きてあまりにも一人 りりりるり鈴虫まねてけんか終ゆ ―冬― 雪うさぎ今消えゆきし身を抱き 酉の市ちがう男の手も温し 平成の句姫、みよこの初句集を連載にてお届けします。 この記事の連載一覧 最初 前回の記事へ 次回の記事へ 最新 暗号のごとき息待つ春の雨 春朽ちてつまびらかにはせぬ思い たよりなきサーフボードよ春の海
エッセイ 『ねぇねぇみかどのおばさん』 【第3回】 六谷 陽子 不良とつるみ始めた近所の男の子…。駄菓子屋のおかみが決行したのは「えこひいき」作戦!? 一 みかどを閉店します富山の片田舎から下町に嫁いだ頃は、母も人間関係で苦労したようです。当時は、各家庭には水道は通っておらず、共同水道を十世帯くらいで使っていたのです。そこに行けば、他の誰かが必ずいます。特に水を使う時間帯は同じだから、会わずにすませる、というわけにはいかなかったようです。年配のおばさんたちは、個性的で嫌味を言う人もいれば、優しい人もいます。年配らの会話を笑いに変えて楽しむ若妻も…
小説 『猫と狸と、ときどき故郷』 【第3回】 宮本 正浩 「子供の命を助けてくださり有り難うございます。これで少し恩返しができたようです」 翌日、夜、狸はやって来た。「何か良い考えが浮かびましたか」と訊ねると狸は黙って首を振った。「何も思いつきません」と言う。私の顔を見つめて「何か計画をお持ちなのですね」察しの良い、頭の良い相手だ。「私のプランはかくかくしかじか」と話すと、狸はぽんと膝を打ち、是非やって見ましょうと言う。「問題は阿波踊りの開催まで1ヶ月しかない。準備ができるかどうかだ」「問題ありません。インターネットを使えば世界の情…