【前回の記事を読む】読経に誘われ辿り着いたのは「糖尿醍寺」の葬儀場!? 前世に通じる道に待ち構えるものとは…?
あなどるな糖尿病
太郎はどんどんデコボコ道を進んで行きます。 水の音が聞こえて来ました。
「あれ? 水の音がする。川があるのかな」
目の先に、ごみが絡まり回転が悪くなった水車がありました。
水が逆流しています。
「何だか汚い水車だな。これだけ、ごみが溜まるとなかなか動かない。あれ、水が逆流しているぞ。いけない。水があふれてくる。早く逃げよう」
「太郎よ、よく見ておけ、お前が放っておいたばかりにお前の腎臓はそのようにごみだらけになり働かなくなったのだ。もうすぐ水は流れなくなるだろう」
「禅師様勘弁、ごめんなさい。こんなふうになっているなんて少しも思わなかった」
太郎は道を変えて進みました。
「だめだ、道を変えてみたが、どこもみな土砂崩れで通れない」
「太郎よ、そこはお前の足の血管だ。足が痛かったり、しびれただろう」
「そうだ、よく足がしびれたっけ、しもやけみたいに紫色にもなった」
「もう少し長生きしていればお前の足は腐って落ち、達磨のようになるところだった。そうなる前に死んで良かっただろう」
「禅師様勘弁、もう決して今までのような事はしません。何とか助けてください。お布施もたくさんします。お賽銭だって差し上げます」
「ばっかもん。お賽銭だと? わしは坊主だ。お宮さんと一緒にするな。お布施と言え、お布施と」
「すみません。お布施でも寄付でも何でもします。何とか助けてください」
「ふーむ、そう言われてものー。どうしたものか。今まで見ての通りお前の道は全て塞がっておる。どうしたものか。おおそうじゃ、一つだけあった
か」
「禅師様、仏様、どこへ行けば良いですか?」
「太郎、お前はこれから風に乗れ。風の吹くほうに向かって歩け。どうやらお前の助かる道はそこだけのようだ」
「風の吹くほうですね。ありがとうございます。禅師様」