「そうですよ」
天は一言そう言う。
そうか、やはり、
こんな世界であっても、
目が醒めれば、二度と来れない。心行くまで、楽しんでみるか。義継はそんな想いのまま、ナマクアランドの如き世界を駆けた。
どんなに駆け続けても、周囲三百六十度そんな鮮やかな色彩の世界だ。何処まで行っても途切れる事はない。少々疲れを感じても走り続ける。
あっ、向こうに丘が見える。
彼処も花に覆われてる。行ってみるか。
誘われるように走り続けて丘まで来た。しかし、走って丘の上に登るのは辛い。走り続けて疲れが溜っているのもある。故に義継は歩いて丘の上に登っていく。
丘の上に辿り着くと、義継は上から下を眺めた。全て三百六十度が鮮やかな色彩の世界だ。ずっとずっと目に入る端の世界すら。
疲れの溜った義継は仰向けに寝た。そして、空を眺めた。
青い空、綺麗だな。白い小さい雲も所々に見える。雲さえ綺麗だ。夢の中とは言え、不思議な世界に入ってしまった。体が辛い。寝るか。案外動き廻ったからな。
そして、義継は眠りに落ちた。
「起きてください」
誰かが声を掛ける。其れも、自分の体を揺すってる。
「うっ……、何だ」
目を醒ますと、目の前に同行してた天が居る。
「此れから、あなたは行かねばなりません。どうしても会って貰う方が居るのです」ふと、義継は不思議に思う。夢の中で寝たり起きたりする事だ。現実の中か夢の中かと判断が混乱する。
「此の花園、可なり広い。此れから行くとすると時間が掛かるのでは?」
義継としては、天に対してこう尋ねざるを得ない。まだ疲れがある上に、此れから歩き続けるのも辛い。
「大丈夫、心配はいりません」
天は安堵させるような一言を言う。
そして、指を二本口に突っ込みピーと指笛を鳴らすと、上空の方に白い天馬が見えてきた。まだ小さく見えながらも、肩から翼が出ているのが見える。天馬は其の翼をゆったり羽撃いている。
更に白い天馬は降下を続け、次第に其の白い美しい姿がはっきりしてきた。天馬の優美な姿は見る者を魅了する。
美しい、美しい、素晴らしい。此れが現実に存在したなら、此れ程の素晴らしいものは、あるのだろうか。
義継は、此の白く大きな天馬に心が囚われていった。