【前回の記事を読む】凄惨な現場にいた容疑者は「あんな残虐な方法でやる子に見えない」…遺体は“立たされた”状態で激しく損壊し、無数の殺傷痕が…

サイコ1――念力殺人

「玄関前の防犯カメラの画像解析を依頼しましたよね。3月9日の夕方、林が帰宅してから彼は外に出ていません。それから現在まで玄関から誰も出入りしていないんです」

「えっ、その前に犯人が家に侵入したんじゃない?」

「あの家には勝手口がありませんでしたから、それなら窓から出て行く必要がありますよね。でも窓にも全て鍵がかかっていました。過去30日間の記録を確認しましたが、彼以外誰も玄関から出入りしていないそうです」

「じゃあ、本当の密室ってこと? まさか本当に超能力殺人? いやいや、まさかそんな。ねえ」

羽牟は救いを求めるように鍬下に同意を求めたが、彼は呆然と虚空を見つめて上の空だった。

「千晶、大丈夫?」

警察署1階のロビーの椅子で待っていた麻利衣は青い顔で戻ってきた千晶の姿を見ると立ち上がり声をかけた。外はすっかり夜の闇に覆われていた。

「私は大丈夫。それよりごめんね。こんなことに巻き込んでしまって」

「ううん。千晶の力になれて私は嬉しい」

「ありがとう。麻利衣がいなかったら私、どんなに心細かったか……。良祐にはもう何の愛情も感じていないけど、さすがにあんな残虐な方法で殺されたのを見たらショックだった」

千晶は嗚咽し、涙を流した。

「犯人を知りたいですか?」

声の方に振り向くと、賽子が二人の方へつかつかと歩いてくるところだった。

「私は透視で林良祐が既に死んでいることを的中させました。こちらは成功報酬として100万いただきます。これで私の能力が本物であるとご理解いただけたでしょう。もし犯人が誰であるかお知りになりたければさらに200万上乗せでお引き受けしましょう」

「ちょ、ちょっと待ってください。まだ私達はあなたの超能力を信じたわけじゃありません。林さんが死んでいたのだって、あれだけしつこかった人が1週間近く連絡してこないなんて、ひょっとしたら死んでいるのかもって私だって少しは思いました。それだけじゃ本当に超能力かどうか怪しいもんです。

それに犯人を当てるのに200万だなんて、警察に任せておけばただで犯人を逮捕してくれます。それなのに何故あなたにそんな大金を支払わないといけないんですか?」

麻利衣は抗議した。

「警察は無能だ。彼らは真犯人を逮捕できない」

「あれを超能力殺人だなんて言う人の方がよっぽど信用できません。

確かに密室でしたが、犯人は何らかの方法で合鍵を作っていたに違いありません。それにあなただってピッキングで侵入できたじゃないですか。

犯人は彼が収集していたナイフで彼を殺害し、残りのナイフで全身を刺した。よっぽど恨みがあったか、それともサイコパスによる猟奇的殺人か。いずれにせよ超能力なんて非科学的な方法ではないはずです」