【前回の記事を読む】「下腹部が痛む」と言う妻。大して心配はしていなかったが、病院に行くと「がんの可能性があります」と言われ…

妻の笑顔

天理でCTと腫瘍マーカの検査をしたらCA19-9が3000、CT画像でも大腸に腫瘍があると診断された。正確な病名は「虫垂がん腹膜播種」。すでにステージ4だという。

大腸がん患者の中でも虫垂がんは0.22%~1.4%、更にその内で腹膜播種は10%の確率、つまり、1000人に1人しか罹患しない希少がんである。

抗がん剤による通常の治療法で5年生存率は10%以下とされている。自覚症状も無く、肛門からの出血もない。自治体の大腸癌検診で発見するのも至難の技。

結果論から言えば年一回ペット検査を受けていたら、もう少し早く発見できたかも知れない。それもがん細胞が6mm以上大きくなっていないとペット画像には映らない。大腸内視鏡検査を受ける為に薬剤、下剤、等を貰って帰宅した。

天理での大腸内視鏡検査当日の朝、利恵子は猛烈な腹痛を訴えた。正にのたうち回ると言う表現がぴったりだ。急遽、息子の車で天理の病院に向う。

診断の結果、腸閉塞を起こしていることがわかり緊急手術が行われ、そのまま入院することになった。手術時間は4時間を超えた。

大腸に詰まっている便、食べ物を取り出そうとしても取れない。ステントを挿入して漸く詰まりを取り除いた。場所が肛門に近いところだったので、医師達の判断でストマ(人工肛門)を設置した。4月6日に入院して、退院したのは5月4日の連休の狭間。

ここから利恵子のがんとの闘い、妻に付添う私と2人での2年7ヶ月の闘病生活が始まる。

その前に治療方法だけ簡単に説明する。がんはどんな種類であれ、手術するか、化学療法を施すかを選ぶことになる。化学療法とは何種類かの抗がん剤でがん細胞を叩く治療法。

利恵子の場合は手術不能と判定され、化学療法をする事になった。薬は4種類。私は主治医に質問した。「抗がん剤でがんを治すことは可能ですか?」

医師は「がんは普通、完治とは言わなくて寛解と言います。初期の場合寛解もあり得ますが、奥さんの場合ステージ4なので、がんの増悪を抑える為の化学療法ということになります」と答えた。

質問を変えた。「がんを抑え込める期間はどの位ですか?」

主治医は「人に依って違うので一概には言えないです」と、お茶を濁すような答えだった。これは延命治療ということになるのかもしれない。

ネットで色々調べたが、最初に使う薬でも耐性が出来て1年持たない。せいぜい半年前後。という事は24ヶ月、つまり2年の命。