「いえ、私はただ良祐が今どうしているのか確認してもらいたいだけで、そんな脅かすだなんて……」
「それならESPのうち、遠隔透視がいいでしょう。こちらはお値段控えめとなっています」
千晶は呆れて開いた口が塞がらないようだった。
「あの、私、こう見えても医師なんです。科学をこよなく愛するリケジョの一人です。そんなサイコキネシスとか遠隔透視とか非科学的な話を簡単に信じてお金を払うような馬鹿じゃありません。麻利衣から変な人だとは聞いていたけど、ここまでとは思いませんでした。あなたにはもう頼みません。帰らせていただきます」
千晶は憤って席を立った。
「帰ろう、麻利衣」
しかし麻利衣は相変わらず先程の姿勢のまま何かを考えこんでいるようだった。
「どうしたの、麻利衣」
麻利衣はようやく眉間から指を離すと卓上の名刺を見つめながら言った。
「千晶、やっぱりこの人にお願いしよう」
「え? でも麻利衣もこの人は詐欺師だって言ってたじゃない」
「もちろんこの人のことを全部信用したわけじゃないけど、また別の探偵を探すのも面倒だし。それにそこまで言うのならこの人の超能力が本物かどうか、この目で確かめたくなったのよ。
とりあえず三人で林良祐の家に行ってみるというのはどう? そこでこの人の能力を試してみようよ。それでやっぱりでまかせだったらもちろんびた一文も払わない。どう?」
「え……うん、まあ、それなら……」
千晶は自ら依頼した都合上、渋々承諾した。
「あなたはどうですか?」
麻利衣が賽子に訊いた。彼女は泰然自若として答えた。
「私ならここからでも遠隔透視はできるが、近くでやった方が確かに正確だし、それにお安くはなります。いいでしょう。一緒に行きましょう」
次回更新は12月22日(月)、21時の予定です。