【前回の記事を読む】肥料も農薬も減らして、収益は上昇! がん克服から始まった柿栽培19年の記録
第一章「柿」栽培への新たな挑戦
2 無肥料栽培への挑戦
無肥料栽培を始める
果樹の栽培に関して、リーフ・ブリックスという理論がある。リーフ・ブリックスとは、葉の中の糖度のことであり葉の中に十分な糖があると、病気や昆虫に対して、十分な耐性があるという理論だ。
もしこれが正しいとすれば、今回、無農薬栽培に至らなかったということは、結果から考えて柿の葉の中に十分な栄養が貯えられなかったということになる。
先日、近くの山に登っていたところ、偶然にも頂上付近でチェコとスロバキア(今はチェコとスロバキアは別々の国である)の夫婦に会った。職業を尋ねたところ、大学で植物の研究をしているとのことであった。
大学では、英語で会話をしているようで、日本語がほとんど話せない。そして、私の英語力では、専門的なことは無理で、リーフ・ブリックス理論の話をすることはなかった。彼らだったら答えてくれたかどうかわからないが、少し残念な気持ちだった。
さて、ここで無肥料の意味を確認しておこう。無肥料といっても肥料がいらないということではない。既に長年肥料を投入して、十分に土の中にあるので、これ以上入れる必要がないという意味で、今後は肥料をやらないことにしたということである。
無肥料栽培を始める前から、数人の友達に柿を毎年さし上げていた。そんな友達から「最近、柿はうまいし長持ちするようになった。正月まで持つものもある。何かしたの?」と言われることがあった。
特に関心ある三人からは、毎年のように言われた。そして、格外品をサンテナで二十五杯程買ってくれる人まで現れ、もう十年も続いている。しかし無肥料にしてから何年でこうなったのか正確にはわからないが、ヤワ果が少なくなったことだけは感じていた。
ところが早生富有には顕著に現れていた。一般に早生富有は、ヤワ果が発生し易く日持ちがせず、進物には向かないとされている。
しかし、無肥料栽培の結果、従来とは異なる柿が出現し、持つと少し重く感じ、密度が高いことがわかる。味もほとんど富有と変わらず、進物にも十分使えるようだ。ただ、気付くのが遅かったので無肥料を始めてから何年経ってからなのか、正確にはわからない。