「実は、父の日誌からキーマンと思われる人物が浮かんできたんだ。モンゴル国立大学のポルジギン教授」
「お父さんとどう関係あるの?」
「以前お会いした糸井教授とも電話で話したんだけど、父はポルジギン教授と多くの研究の時間を過ごし、どうやら父が一番信用していた人らしい」
「そうなんだ」
「京子にひとつお願いがあるんだけど、モンゴル国立大学に電話をかけてもらって、このポルジギン教授がいるか確認してほしい」
「もしかして、大学にいたら会いに行きたいと思ってるのね」
「うん、父のことをよく知っているのは、この教授だけだから」
「わかった。電話番号は、インターネットでも調べられるわね」
京子がスマホを取り出す。
「今、電話してみるね」
「モンゴル国立大学です」
「ハロー、私はモンゴル文化の研究をしている日本の者ですが、ポルジギン教授はいらっしゃいますか?」
「ポルジギン教授の部屋におつなぎします」
「ハロー、私はポルジギン教授の助手をしてますが、教授にどんな用事でしょうか?」
「私の学友で竜神健という者がいますが、彼の父は竜神亮と言い、ポルジギン先生と懇意だったようなので、電話をさせてもらいました」
「少しお待ちください」
「ポルジギンです。リョウは私の親友です」
「ポルジギン先生、彼の息子の健があなたに会いたがってますが、会っていただけますか?」
「もちろんです。私こそ是非お会いしたい」
「わかりました。スケジュールは助手の方と詰めれば良いですか?」
「そうしてください。なんと素晴らしい。リョウの息子と会えるなんて」
「それでは先生また」
電話を切ると同時に京子が笑顔で言う。
「健、ポルジギン先生、是非会いたいって言ってるよ」
「うん、会いに行こう。月末なら学校さぼれる」
「仕方ないな。私もさぼるよ」
「ありがとう! 京子がいないとなんにもできないから」
「それじゃ、私を健の彼女にする?」
「えっ……」
「冗談よ。健は私のタイプじゃないし」
京子は綺麗だし、頭も良く、明るい。でも、高嶺の花のイメージが強く、京子からそう言われると戸惑う。
「何困った顔してるのよ、失礼ね……」
「ごめん」
「なんで謝るのよ」
「ごめん」
「また謝ってる」と京子は呆れ顔だった。
しまったと思ったが、京子は笑って渡航の準備をすると言って出て行った。