ここで論じたかった事柄は、『記紀』編纂時に当事者(編纂者)がどのような編集態度や方向性を持っていたかである。文字記録のない弥生、古墳時代の聞き取り情報を活用し、「万世一系」の皇統とそれに連なる豪族の皇統への収斂を意図したことはすでに言及した(第一話)。

狙いは成功して、古代を貫く「万世一系」の日本史が完成したかに見えた。しかし「第二話」の倭の五王に関する中国史書の内容や考古学的証拠から、『記紀』に述べられた政治状況があり得ないと論じた。

したがって『記紀』編纂時の意図、方向性を考慮しつつ、『記紀』からどのような古代日本史の再構成が編纂者達によってなされたかを探らなければならない。その一つが数値情報に基づいて、皇統を逆方向へ分解する今回の試みである。

正否は別にして、このような『記紀』の編纂時の編集操作の分析はもっと行われるべきだろう。

写真を拡大 表2 皇統の接ぎ木
写真を拡大 表3-1 天皇の名前と称号(古事記)
写真を拡大 表3-2 天皇の名前と称号(日本書紀)