次の日、教室へ行くと、ちょっとした騒ぎになっていた。

先ず、仲の良い男子数人が教室から僕を引きずり出した。

「おい! 加納! お前、いつもは何でもない顔しやがって!」

ひとりがそう言ってきた。

「なんだよ」

「昨日、あそこの公園で安藤さんと抱き合ってただろ!」

「は?」

「見た奴、けっこういるんだからな。俺も見た!」

抱き合ってた……思ってみれば〝それ〟には近かったかも。

「見間違いだろ」

何気にシラをきった。

「いや!絶対にお前と安藤さんだった」

「一緒に帰ってたよな?」

「付き合ってるなら、正直に言えよな」

友人たちの執拗な攻撃。無理もないが。

「だからさ、付き合ってもないし、抱き合ってもないって」

「そっか〜?」

「ちょっと昼休みに俺がキツイ言い方したから、謝ってたんだよ」

今度は完全に嘘をついた。彼女の真実を守るためなら、この程度の嘘は許されるはず。

「どうだかな〜?」

「抱き合ってるように見えたけど?」

まだ執拗な質問は続く。

「ったく! 何を見間違ってんだか」

更にシラをきる……というか嘘を重ねる自分。たぶん、慣れてない嘘を上手くつけたらしい。納得したような友人たち。

「ならいいけど……さ」

「いいけどってなんだよ」

「俺たちに内緒ってのはな……何となく……ナントナクだからさ」

「付き合ってるなら、お前らには言うし、かなり自慢してやるよ」

「だよな〜」

男子同士なんていうものは、案外サッパリしたものだ。正直、付き合ってはいないし。「誰にも言わない」という約束があるだけだ。たぶん、男子の誰もが、彼女に対して恋愛感情を持つ以前に、〝付き合う〟ということ自体、有り得ないと思っていたはず。〝好き〟という感情はあったとしても、自分と同じ。〝憧れ〟……そのような感覚だろう。