【前回の記事を読む】「妊娠してた方が、まだよかった」――バイク事故で逝った彼を思い、彼女は見上げていた空を指さした
第一章 コスモスの頃
四.約束
「転校してきたのは大した理由じゃないって言ってなかったっけ?」
少し、話題を逸らした。
「実際の理由としては……大したことないでしょ? 親の転勤だから」
「それはそうだけど」
「だって……今話したこと、転校理由には書けないでしょ」
「まぁ……ね」
「だからね、『実際は』って言ったの」
そう言った彼女は、もう、いつも教室で隣に座っている彼女に戻っていた。笑顔も何もかも。目が少し赤いだけ。その日の昼休みに見せた目と同じ。
「あ……だから、昼休み、参ってた感じになってた?」
「うん……そうかも……予備校の講師だけは合ってたから……ね」
「そっか……悪かったね」
「いいの。お蔭で話せたから」
「ちょっとは、気が楽になった?」
彼女は笑って頷いていた。
「だったらよかったけど。誰にも言わないからさ」
「ありがと。加納君って……何となく、そういう人かなって思ったし」
「ん?」
「だから話せたってこともあるかも」
「どこが?」
「なんとなく……信用できそう」
「そう?」
「女の子の勘って、けっこう当たるんだよ」
僕は、その言葉を聞いて、少し笑ってしまった。
「なによ〜!」と彼女は言っていた。その言い方が、クラスの女子と同じような……遠い存在ではなくなった瞬間が嬉しかった。
「また辛くなったら話していいからね」
僕がそう言うと、彼女は、それは嬉しそうな顔で笑いかけてくれた。