「学校(教師)には、四つのワークが必要である。①デスクワーク、②フットワーク、③チームワーク、そして地域や保護者との④ネットワークです。それらができない場合は…教師を辞めてハローワークに行ってください」

真剣に話を聞いていた私は、最後の一節を聞いて思わずズッコケた。そういう〝落ち〟をつける人なのか? 何か、とっても興味をそそられる方に見えてきた。しかし、後川校長が発した次の一言があまりに強烈だった。

「この四月に入学してくる一年生は二、三年生よりももっと〝問題を起こす人材〟が揃っています。それもあって今年は一年生を職員室の真上のフロアに置きます。皆さん心してかかるように!」

校長の話の真の意味がわかるまで、そう長くはかからなかった…。

二 緊張と不安の中、教師生活最大の危機を迎える

私の配属先は三学年の副担任…。三年生の教室は北校舎の二階に位置し二クラス。一組は佐々木光夫先生、二組は岡本真理子先生が担任であった。

学年会を開く前に、赤い色画用紙と模造紙を使って何かを作り始めた担任の二人。私は言われるままに〝工作〟の手伝いをしたものの…、

「何ができるのかな?」完成したモノを見て、「なるほど~」それは、大きな鳥居と賽銭箱であった。

 

進路を切り開くにも最後は〝神頼み〟も必要…と私自身の中学校三年生の頃を思い出す。普段から信心していないのにも拘わらず、〝苦しいときだけの神頼み〟と手を合わせていた自分自身を思い出していた…。

この三年生、どちらのクラスも生徒指導上の人材は豊富で、さて私はどのように学年経営・教科経営に参加すべきか…。もう一人の副担任の先生と相談しながら考えることにする。

就任式の挨拶。
「今度来た先公はどんな奴なんか。まあ、話くらいは聞いてやろうか」と、今までの学校では一応聞いていた感じはあった。しかし、「何じゃ、こりゃ~」

就任する私たちが会場に入り、式が始まろうとしているのにゴソゴソ動き回る…、立ったり座ったりする…。

人の話をまともに聞くこともできない生徒があまりに多いのに驚いた。先生たちも落ち着かせようとされていたが、先生の指示も聞こうともしない生徒ばかりで、まるで保育園か託児所みたい、と言えば叱られるかもしれないが…。

ただ、私の着任の挨拶の中で、

「悪口を言う人にはイエローカード。人をいじめたり暴力を振るったら一発でレッドカードを出すぞ」

と話し、実際に胸ポケットからカードを出して見せた場面だけは…、一瞬、静まった感はあった。

「この先公はカードを持っているぞ」というその一点だけで反応していた生徒が何人か見えた。緊張感と不安いっぱいの船出であった。

 

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