【前回の記事を読む】「できたらあの中学校には勤務したくないなあ」… “恒常的に荒れている”学校へ赴任することに…
一 野球バカと後川校長との出逢い
その翌年も再び遠征した。この年のM中の野球部顧問はO先生だった。
二試合目終了後、互礼し選手同士がすれ違って相手ベンチへ挨拶しに来るといういつものシーンで、T中でも向こうっ気の強いある生徒とM中のある生徒がいきなり取っ組み合いを始めたことがあった。すぐに止めに入り本校の部員に事情を聞くと、
「一試合目の互礼の後のすれ違いの時に肩がぶつかったのに、あいつは謝りもしなかった」
と言い、試合の途中から睨み合っていたとか…。
M中の生徒も小柄ながらパンチ力はあり、さらに気の強さも抜きん出ていた。試合後、双方を呼び、
「こういう形ではなく、野球で勝負できるようになろう。大会の決勝で対戦できるように野球を頑張ろう!」
という話をし、握手させた記憶がある。
野球部の部活動(練習試合)以外に社会科の研究会でM中には何度か訪問したことがある。その時、体育館への渡り廊下を歩いていた私は、たまたまM中の校長先生とすれ違った。
「こんにちは。お世話になります」と挨拶した。
「ご苦労様です。こちらこそお世話になります」と丁寧に挨拶を返されたのが後川芳治校長であった。
紺色のブレザーに金ボタンのパリッとした服装でがっちりとしたゴツい体格、そして白髪のダンディーな男性…であった。見るからに体育会系、しかも、「武道系だろうな」と予想できた。初めて出逢った時の印象である。
このようなエピソードを除いて、ほとんど情報はないまま、身辺整理をし、M中への転勤の準備は終了した。そんなこんなで四月一日、M中学校勤務が決定し新聞発表もなされた。
新学期のスタート。最初の職員会議で後川校長が、今年度の教育目標や目指す生徒像と取り組みの方向性等、学校経営方針を話し始めた。
教師としての行動目標は、「時を守り、場を清め、礼を正す」具体的行動は、「率先垂範」「言行一致」「師弟同行」である。
生徒指導体制と学習規律の確立に向けた様々な取り組み等、熱く語られていたのを思い出す。
「ふむふむ、なかなかいい話をされるじゃないか」と、新年度のスタートを切る校長の大切な話を聞いていた。さらに、