今考える必要があるのは、この卵をどうしようか、ということです。

「ヨシ、いいよ」と私が声をかけます。

その声に応じるように、オポが指し示していた卵を調べ始めました。遠巻きににおいを感じとっていたものを、鼻先を卵に近づけて舐めるようににおいを嗅いでいます。

これまでオポに卵を殻のままで与えたことはないけれど、卵を割っている風景は何度も見たことがありました。

その卵からどのようなにおいがしたのかは、想像するしかありません。オポがこの卵が「食べられるものと判断する」という私の予測は固いものでした。ただ、どの段階で「食べる」という行動に移るのか、についての検討がつきませんでした。

卵を殻のまま丸呑みするのだろうか、もしくは口にくわえて割ってしまうのか。この後のいろいろな状況が、頭の中で繰り広げられます。

しばらくすると、オポは後足と片方の前脚を地面につけて、片方の前足の爪先の部分を卵の表面に軽くあて始めました。人でいうと片手で卵の表面をカチカチという感じです。それはとてもソフトな当て方だったので、潰れるかと思った卵は形を変えていません。

カチカチ、カチカチとさせていると、卵の表面の一部がほんの少し割れました。表面の 一部に少しだけ穴が開いたのです。

オポはその穴の中を少し嗅いで、それから迷わず舌でペロペロと卵の中身をなめ始めたのです。舌でなめ始めると卵はさらに割れて中身が見え、オポはそれを一気に舌ですくい上げて食べてしまいました。そして、卵の殻は食べなかったのです。