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第二章 看護師へのルーツ

私が看護師になりたいと思い立ったのは高校生のときだった。

実家は、栃木県佐原市の春山川のほとりにあって、父は近くのセメント工場の会社員をしていた。

母は働いておらず、家で家庭菜園を作っていた。田舎なのであまり娯楽はなく、自然を相手に小さいころは、三つ年上の兄と兄の友だちとよく遊んでいた。

活発なほうではあったが、だからといってやんちゃになるようなことはなく、狭いなかで男子の友だちしかいなかったせいもあって、逆に、女子のなかでの立ち振る舞いが苦手になった。

女生徒のなかでは、むしろシャイな性格になってしまった気がする。その兄も、私が高校に進学すると、実家を離れて東京の大学に行ってしまった。

〝マコ〟と〝ショウ〟という雑種だけど猫が二匹いたから、私と両親は、兄のいない寂しさを、それでなんとか紛らわすことができた。

幼少時代の私は、さりとて秀(ひい)でたものはなく平凡な毎日をすごしていた。強いて言うなら少しだけ脚が速かったが、これはきっと兄たちと駆けずり回っていたからかもしれない。

徒競走やマラソンはもちろん、器械体操なんかもわりと得意だった。だから、中学と高校は、教師の勧めで陸上部に所属することになった。そういう意味では大きな悩みもなくここまで成長できたと思う。

看護師になりたいと思ったきっかけをさかのぼると、そのルーツは二回の入院経験にあった。

一回目は、中学生のときの〝顔面神経麻痺〟だった。原因はよくわからないのだけれど、とにかく急に左の顔の筋肉が動かなくなってしまった。朝起きたらなんとなく左のほっぺたが腫れぼったいような、重いような感覚があった。

いつものように顔を洗ったところで、どうにも感じがおかしい。鏡を見ると左の口が垂れ下がっているのに気がついた。痛くはないが、これはさすがに変だと思って母親に伝えたところ、すぐに地元でいちばん大きな病院であるところの佐原厚生病院に連れて行ってくれた。