西南の遠くの空に富士山が見える。年を取ったせいか、富士山が見えるとありがたくて思わず拝んでしまう。北には冴え冴えした男体山。女峰山、白根山の白い山肌が連なる。いつも不思議に思う。高い山の頭上はいつも雲を浮かべている。「山々の深い悩み」と呟(つぶや)いてみる。

スピノザは言っている。受動的な思考での行動は良い結果を導かない。未来の行く末はわからない、自分たちで今の足元を精一杯生きるべきだ。今は亡き所長の椅子に「お疲れ様です」と挨拶をする。「私たち頑張ってますよ」と。

所長はなにをしてもだめ出しをする厳しい人だった。けれども見守っていただいていると思うだけで、M体質の私たちはちょっと強くなれるのだ。私たちはひとりではない。こんな未熟な私たちを頼ってくれる人たちもいる。今年も1年やれるだけの精一杯を考えて行動するのみだ。

6 少水常流如穿石

飛行機が好きである。携帯アプリにフライトレーダーなるものがあって、今空を飛んでいる飛行機の情報がすぐ出るのである。今朝はソーダ色の空に落書きしたみたいな右往左往の無造作な線が描かれている。「乱雑な戯れのあと」と呟きながら、アプリで落書きの手がかりを検索する。かなり離れた地方で航空ショーが開催されているのを見つけた。

かなり前のことだが、毎年11月初旬になると、東の方の町でアエロバティックショーが開催されていた。運が良ければ、とてもチャーミングなブルーインパルスジュニアの演技も見られた。もちろん曲芸乗りは素敵なのだが、なんといっても演技の前や後で、〝流し〟で飛んでいる飛行機が素敵なのである。

 

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